青い空はポケットの中に - ドラミちゃんの日

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ドラミちゃんの日

12月2日は、ドラえもん……じゃなくって、ドラミちゃんの誕生日です。
ハッピーバースデイ、ドラミちゃん!

1週間ほど遅れてしまいましたが……。

ドラミ

今回は宣言通り、ドラミちゃんについて少しお話したいと思います。

最初に、よくご存知ない方のためにドラミちゃんの簡単なプロフィールを紹介します。

◆ドラミちゃんプロフィール◆
☆関係:ドラえもんの妹
☆役割:家庭科専門ロボット→ドラえもんのサポート的役割へ
☆身長:100.0cm
☆パワー:1万馬力
☆誕生日: 2114年12月2日
☆好きな食べ物:メロンパン
☆嫌いなもの:ゴキブリ
☆特技:歌と料理、家事全般
☆搭乗タイムマシン:チューリップ号

身体的特徴としてはドラえもんに似た体形で、色は製造時のドラえもんと同様に黄色です。ポケットにはチェック柄があしらってあり、しっぽは花柄模様になっています。使用する道具は「どこでもドア」に模様があるなどの細かい違いもあり、その多くが花柄をあしらった女の子らしいデザインとなっています。道具に関して補足すると、初期は家庭科専門ロボットという設定であり、ポケットから出す道具も料理や掃除といった家事に関する物ばかりでしたが、後にはドラえもん同様の様々な道具を出すようになっています。頭の後ろのリボンが「リボン型集音装置」と呼ばれる耳となっているというのは比較的有名な話のようです。また、ドラえもんの顔にはレーダーひげがありますが、ドラミちゃんは女の子なのでひげはなく、代わりにリボンがレーダー機能を兼ねています。

なぜロボットなのにドラえもんの妹なのかというと、ドラえもんと同じ缶のオイルを分け合って製造されたからです。しかし、上澄みの薄い部分をドラえもんに、下半分に沈殿していた濃くて良質な部分をドラミちゃんに使ったため、兄よりも妹のほうがかなり優秀という設定が出来上がりました。

体重の設定は流動的であり(まあレディに体重を聞くのは失礼だという話でもありますが)、私も完全には把握していなくて、 35kg→91kg→100kg→91kgとテレビの放送年代や出版物の発行年によって記述がまちまちでしたが、現在では91kgで統一されているようです。

以上は方倉陽二氏(かたくら・ようじ、漫画家で藤子・F・不二雄先生のチーフアシスタントを務めていた)が描いた『ドラえもん百科』という作品によるもので、藤子F先生がドラえもん本編で直接描いた設定ではないことに留意しておく必要があります。

1970~80年代のファンにとってこの方倉版『ドラえもん百科』の影響力は大きく、今現在ドラえもんや主要キャラクターの公式設定とされているものの大部分はこの、いわゆる「方倉設定」が由来だと言われています。その影響力は藤子F先生にまで及び、ドラミちゃんの搭乗タイムマシンである「チューリップ号」は、方倉版『ドラえもん百科』の出版後にドラえもん本編に”逆輸入”される形で描かれました。それ以降は、アニメや映画にも当然のごとく登場し、ドラミちゃんのタイムマシンといえばあの赤いチューリップの形っていうくらいファンに定着しています。私自身は完全に後追い世代というか、映画『2112年ドラえもん誕生』(1995年)以降の世代ですね。

ドラミちゃんは原作における性格の変遷が激しいキャラクターでもあります。今では真面目でしっかり者のキャラクターとして認知されているようです。ただし真面目すぎる面があり、道具に頼らずのび太に自分の力で物事を解決させようとする傾向があります。道具の使いこなし方も兄であるドラえもんよりも優れていることを示すエピソードが原作には多数存在します。登場初期はかなりのおてんばぶりで、1万馬力の怪力で暴れ回りドラえもんを力づくで押さえつけるなど、かなりの暴れん坊キャラクターとして描かれていました。詳しい方は『ドラえもん』連載最初期にごくわずかな期間だけ登場した「ガチャ子」という幻のアヒル型ロボットキャラを想起してみてください。そうすると、ドラミちゃんはもしかしてガチャ子と同系統のキャラクターとして描かれていたのではないかと思える節があります。その後連載が進むにつれ、後期にはしっかり者のお世話ロボットとして定着していくこととなります。

ところで、ドラミちゃんは藤子F先生が直接考えたキャラクターではないことをご存知でしょうか。そもそもドラミちゃんは、小学館の学習雑誌『小学4年生』のある読者がアイディアを小学館に送り、それが採用されたことで生み出されたキャラクターなんですよ。

ここでちょっと興味深い画像をご覧いただきたいと思います。

dorami-prototype.jpg

あれあれ、これはドラミちゃん?……でもなんか変!?

それでは、ドラミちゃん誕生の経緯を説明します。1973年2月、『小学四年生』(小学館の学習雑誌)3月号誌上で、「かわいいドラミちゃんがでます。よろしく!」とのび太により予告されます。このときはまだ妹であるとは設定されておらず、告知のカットではドラえもんがドラミちゃんに照れている素振りさえ見せており、上の画像のようにデザインも今とはかなり異なっています。もしかしたら当初はドラえもんのガールフレンド的キャラクターとして想定されていたのかもしれません。そして同年3月発売の『小学5年生』4月号掲載「ハイキングに出かけよう」でデビューを飾ります。このときにドラミちゃんは現在のデザインになりました。「ハイキングに出かけよう」は藤子不二雄ランド第2巻(中央公論社)収録ですが、残念ながら現在では入手困難です。

※Wikipediaでは、「ドラ美」なる表記がなされていますが、上の画像以前にも告知があったんでしょうか。ちょっとそこまではわかりません。

さて、ドラミちゃんはジャイ子と同じく、キャラクターの性格や『ドラえもん』の物語における立場・役割が連載時期によって大幅に異なっています。ドラミちゃんのキャラクターとしての立ち位置は、『ドラえもん』とは別の作品である『ドラミちゃん』に登場していた時期と『ドラえもん』本編に統合されて以降、そして再登場後の3つの時期に分けることができると思います。

◆『ドラミちゃん』時代◆
ドラミちゃんはデビュー当初『ドラえもん』本編に登場した回数はごくわずかで、それ以降は『ドラえもん』の外伝的作品、今風に言うとスピンオフ作品である『ドラミちゃん』(『小学館BOOK)』『小学生ブック』連載)の主人公として活躍することになります。この作品は、ドラミちゃんがのび太の遠い親戚であるのび太郎の家に居候し、彼の面倒を見るという物語でした。第1話「じゅん番入れかわりき」は、ドラミちゃんがドラえもんの手伝いに現代の野比家へやって来たものの、偶然にも町中でのび太郎に出会い、彼の世話をすることになるというエピソードで、作中ではのび太とのび太郎が共演しています。残念ながら第1話「じゅん番入れかわりき」は後述する理由で現在では極めて入手困難となっています。

『ドラミちゃん』はメインキャラクターも『ドラえもん』のレギュラーメンバーとは異なり、しずかちゃん的美少女キャラは「みよちゃん」、ジャイアン的ガキ大将キャラは「カバ田」、スネ夫的キザ&嫌味キャラは「木鳥高夫(ズル木)」という配役でした。のび太郎のママの名前は「野比のぶ子」で、彼らはみな藤子F漫画の王道パターンを踏襲しているものの、『ドラえもん』のレギュラーメンバーとは似て非なるキャラクターだったのです。

【参考】『小学館BOOK』『小学生ブック』掲載順と初出タイトル
・『小学館BOOK』掲載作品
1. 1974年01月号「じゅん番入れかわりき」
2. 1974年02月号「のび太郎テレビ出えん」
3. 1974年03月号「ふしぎなドア」
・『小学生ブック』掲載作品
4. 1974年05月号「ふしぎなキャンデー」
5. 1974年06月号「ここほれワイヤー」
6 .1974年07月号「海底ハイキング」
7. 1974年08月号「公園のネッシー」
8. 1974年09月号「とう明人間」

◆『ドラえもん』本編に統合へ◆
『ドラミちゃん』の連載エピソードは、第1話「じゅん番入れかわりき」を除いた7話全てが『ドラえもん』の単行本に収録されています。上記のような設定の『ドラミちゃん』が『ドラえもん』本編の単行本であるてんとう虫コミックスに収録されるにあたって、『ドラえもん』の設定と辻褄を合わせるため、レギュラーメンバーの名前や顔が大きく描き換えられることになりました。

例えば…

・のび太郎→のび太
・みよちゃん→しずちゃん
・カバ田→ジャイアン
・野比のぶ子→野比玉子


といった具合です。しかし、木鳥高夫(ズル木)はスネ夫に変更されることなく”木鳥高夫”のまま単行本に収録されています。おそらく、チビのスネ夫に対しズル木は普通の身長なので、身体全体の描き換えは困難と判断されたためでしょう。ちなみにスネ夫が全く登場しないわけではなく、「ウラシマキャンデー(ドラミちゃん)」(てんとう虫コミックス第9巻収録)というエピソードの中では、端役の少年の顔がスネ夫に描き換えられています。あと、のび太郎のパパの顔がのび太のパパの顔に描き直されています。ちなみに、のび太郎についてはのび太そっくりだったので名前だけが変えられました。

したがって、第1話で、のび太郎とのび太が共演し、『ドラミちゃん』が『ドラえもん』とは全くの別作品であることを示すエピソードであり修正の効かない第1話「じゅん番入れかわりき」は単行本未収録となってしまったわけです。

てんとう虫コミックスの古い版では、修正ミスによって「みよちゃん」「カバ田」「野比のぶ子」といった名前が残っている箇所があります。のび太がしずかちゃんのことを「みよちゃん」と呼んだり、ジャイアンのことを「カバ田」と言ったりする(のび太がジャイアンの家の前で「まちがえた。これはカバ田の家だっけ。」と言っているコマがあるが、現在の版では修正済み)ので、古い版をお持ちの方は疑問に思った方も多いようです。私が所持している版は比較的新しいので全て修正済みです。

「カバ田」の修正ミスは比較的最近まで直されなかったようです。ちなみに、このコマが興味深いのはジャイアン(カバ田)の家が普通の洋風一戸建て住宅になっているということです。ジャイアンの家、つまり剛田家といえばボロい和風建築で雑貨屋(乾物屋や八百屋の場合もあり)を営んでいるはずですが、このコマを見るとこのエピソードの初出が別の作品であることが何となくおわかりいただけると思います。それ以外でも家屋や家具といった部分の修正までは難しかったようで、現在の版においても、のび太の部屋にベッドがあったり、野比家の門構えが妙に豪華だったりといった微妙な違いは残っています。

また、セリフや行動から読み取れるキャラクターの性格、それに家族関係も、この2作品の違いをおぼろげながら浮き立たせる結果となっています。例えば、のび太がやたらと研究熱心だったり、のび太の家族も彼に非常に好意的でなおかつ積極的に家族で旅行に出掛けたりするなど、野比家のキャラクターのあり方とは明らかに異なっています。また、ドラミちゃんはのび太郎のことを連載時は「のびちゃん」と呼びかけていましたが、単行本収録後はのび太に対して「のび太さん」と呼ぶように変更され、ドラミちゃんがのび太を呼ぶときは「のび太さん」であることは現在まで漫画・アニメ問わず一貫しています。つまり、後述するドラミちゃんの立場の変遷により、のび太(のび太郎)の家に居候し彼と寝食を共にしているキャラクターからゲストキャラクター的扱いへと、ドラミちゃんとのび太の関係が変わっていくことにあたって、このような他人行儀の呼び方に変更されたわけです。ちなみにドラえもんはのび太のことを、アニメでは大山ドラ・わさドラ共に「のび太くん」と呼ぶことで統一されていますが、原作でも基本的には「のび太くん」であるものの「のび太」と呼び捨てにする場合も非常に多く(特に連載後期)、原作におけるキャラクターの関係というものを読者に提示してくれています。

小学館の学習雑誌(学年誌)での連載がメインだった『ドラえもん』とは違い、『ドラミちゃん』はメインの連載誌である『小学館BOOK』『小学生ブック』の主たる読者層である小学校高学年を意識した描き方がなされ、今読んでも非常に読みごたえのある内容となっています。『ドラえもん』のエピソードでも『週刊少年サンデー増刊』に掲載された「のび太の恐竜」「ゆうれい城へ引っこし」などには同様の傾向が見られます。例えば「ネッシーが来る」(てんとう虫コミックス第6巻収録)は、緻密な描き込みと迫力あるストーリー構成で、このエピソードが小学校高学年~中学生程度を読者に想定して描かれたことは明白です。その他のエピソードも、まだドタバタギャグの色彩が強かった『ドラえもん』初期の各話と比べて、科学的知識を惜しげもなく散りばめ、山奥村・地底・海底といった場所へ冒険に出かけるなど、読みごたえやスケール感のある作品が多いのが特徴です。これらはみな初期の単行本に収録されたため、単行本の各話を順番に読んでいくと明らかに浮いた印象さえ読者に与えることがあります。

『ドラミちゃん』は、『小学館BOOK』『小学生ブック』で1974年1月号~9月号(4月号は休載)まで連載され、全8話が描かれました。てんとう虫コミックス『ドラえもん』には第1話を除く7話全てが収録されています。『ドラミちゃん』として描かれた7話は以下の通りです。タイトル表記は全ててんとう虫コミックス版に準拠しています。

【参考】てんとう虫コミックス『ドラえもん』掲載順と各話タイトル
1. 「海底ハイキング」(てんとう虫コミックス第4巻)
2. 「地底の国探検」(同5巻)
3. 「ネッシーが来る」(同6巻)
4. 「山おく村の怪事件」(同7巻)
5. 「とう明人間目ぐすり」(同8巻)
6. 「ウラシマキャンデー(ドラミちゃん)」(同9巻)
7. 「テレビ局をはじめたよ(ドラミちゃん)」(同11巻)

『ドラミちゃん』連載話はどのエピソードも非常に面白いので、読んだことがない方はこの機会に読んでみてはいかがでしょうか?

◆沈黙、そして突然の再登場◆
『ドラえもん』のスピンオフ作品『ドラミちゃん』の連載が終了してから約5年間、ドラミちゃんは『ドラえもん』本編から突如として姿を消し、沈黙状態が続きます。

そして沈黙を破り、ドラミちゃんは突如として『ドラえもん』本編に返り咲きます。そのドラミちゃん再登場エピソードで『ドラえもん』の原作後期におけるキャラクターのあり方を確認できる非常に重要なエピソードが1979年に掲載された「ドラえもんとドラミちゃん」(小学館コロコロ文庫「ドラえもん」ドラミ編収録)です。これは出木杉の初登場エピソードでもあり、私はここから『ドラえもん』の原作後期がスタートしたと勝手に考えています。

このエピソードでドラミちゃんは普段は22世紀(2125年)のセワシの家に居住し、たまにゲストキャラクターとして、あるいはのび太のピンチヒッターとして『ドラえもん』本編に登場するというキャラクターの立場が明確になります。この再登場によって、そして出木杉というキャラクターの登場によって、ドラえもんとのび太の関係、のび太としずかちゃんの関係がメタ的に揺るがされ、そして再確認されることになっていくのです。

ドラミちゃんの再登場によって、ドラえもんは果たしてのび太の良きパートナーか、のび太はドラえもんという存在によって堕落していないかということが自己批判的に言及されます。それ以降のドラミちゃん登場エピソードはドラえもんとのび太の関係を再確認する内容である場合が多くなっていきます。そして、しずかちゃんとの結婚が「のび太のおよめさん」(てんとう虫コミックス第6巻収録)で確定したはずの、のび太の未来も出木杉という存在によって揺るがされていくことになります。

ドラミちゃんの再登場は、『ドラえもん』の原作後期におけるマンネリ化を打破する起爆剤となりました。藤子F先生はそのような目的でドラミちゃんを新たなキャラクターとして再び活躍させることを決断なさったのではないでしょうか。

◆アニメのことについても少しだけ...◆
アニメでのドラミちゃんの声は、大山ドラでは声優のよこざわけい子さん、わさドラではタレントの千秋さんが務めています。

よこざわさんの声はドラミちゃんの聡明で利口な性格の印象を創出し、視聴者に定着させるのに一役買いました。私もとても好きな声です。

千秋さんの演技は初登場時には不安が残るものでしたが、現在では演技力も向上し、安心して見られるようになりつつあります。特筆すべきはドラえもんが大山さんとは異なるテイストの声に変更されたのに対し、ドラミちゃんの声はよこざわさんのテイストをそのまま踏襲した声になったということです。よこざわさんと千秋さんの声は似通っており、ドラミちゃんのキャラクター作りにおけるよこざわさんの影響力が予想以上に大きかったことを物語っています。

12月5日(金)のアニメドラえもん(わさドラ)はドラミ誕生日スペシャルとして「ドラミの最悪の一日」と「世界一のメロンパン」というオリジナルエピソードが2話放送されました。ベタな展開ではあるものの無難な脚本と演出だったので、詳細は割愛します。ちなみに、「世界一のメロンパン」ではスタッフの遊び心として、『ドラえもん』に登場したゲストキャラがモブキャラとして行列の中に確認できたという記述がいくつかのブログ記事で散見されました。もっと目を凝らして見ておけば良かったかも。

あと、テレビ朝日の『ドラえもん』公式ページは今ドラミちゃん特集で、ドラミちゃん風のかわいらしいデザインへとがらりと変わっています。おそらく特集は今週中までだと思うので今のうちに見ておいたほうがいいと思いますよ。

・テレビ朝日|ドラえもん

以上、ドラミちゃんについてちょっとだけ語ってみました。

12月と聞いて忘れてはならないのは、12月1日はドラえもんの原作者である藤子・F・不二雄先生のお誕生日であるということです。現在もご健在ならば75歳になられているはずです。下界から天国の藤子・F・不二雄先生へ、いちファンとして「お誕生日おめでとうございます」と言わせていただきたいと思います。12月2日をドラミちゃんの誕生日に設定した方倉氏は、彼なりの藤子F先生に対する尊敬の念の表れだったのかもしれませんね。

【参考サイト】
・藤子不二雄ファンはここにいる/koikesanの日記
・ドラちゃんのおへや
・からつぶ - 藤子・F・不二雄作品データベース

【同一記事】
・青い空はポケットの中に - ドラミちゃんの日

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